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平成21年2月定例会の知事議案説明要旨

当初提出議案(平成21年2月24日)

 本日ここに、第10回定例県議会を招集いたしましたところ、議員の皆様には、ご多用の中、ご参集いただき、厚く御礼申し上げます。
 このたびの議会は、県政運営の基本となる平成21年度の当初予算をはじめ、多くの重要な案件についてご審議をお願いするものであります。
 議案の説明に先立ち、まず私の県政運営に対する所信の一端を申し述べ、議員各位をはじめ県民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げる次第であります。

 世界は、米国を震源地とする百年に一度といわれる経済危機に見舞われています。
 激しい信用収縮、世界的な需要の大幅減退、資産価格の下落により、景気の底がいまだ見えない厳しい状況が続いております。
 世界経済が一刻も早くこの危機を脱出するためには、各国協調のもと、金融システムの改革、果敢な財政出動、自由貿易体制の堅持、技術革新による新しい世界市場の創出が必要であります。
 日本経済も大きな打撃を受けています。昨年10月から12月期のGDPは年率12.7%のマイナスとなり、我が国は戦後最悪の不況に突入しています。
 自動車、電機など輸出企業の激しい減産、大規模な雇用調整、赤字転落、金融機関の貸出余力の低下など景況は日を追うごとに悪化しています。
 特に雇用は、生活の最も大切な基礎であります。ワークシェアリングの積極的な導入など、共助の精神で雇用を守るために全力を挙げなければなりません。
 少子高齢化が急速に進む中、国民から安心・信頼される社会保障システムを築かなければなりません。国においては、公的年金の財政方式や増大する医療・介護サービスの財源確保、救急医療問題や産科・小児科医の不足など社会保障制度の改革議論が進んでいます。
 持続可能な制度設計を行うとともに、少子化対策に思い切って財源を投入し、若々しく活気溢れる国づくりを進めなければなりません。
 平成21年度は、第2期地方分権改革の年であります。国の出先機関の廃止・統合、国の過剰関与や義務付けの廃止、税財源と一体となった大幅な権限移譲を実現するため、地方側は結束し、改革を推進します。

 このような内外情勢の中、私の県政運営の基本方針を申し述べます。
 まず、景気・雇用対策に総力を挙げて取り組むことであります。
 本県においても、派遣社員の雇い止めや新卒者の内定取り消し、企業の大規模な人員削減が相次ぐなど、雇用情勢は悪化の一途をたどっています。
 この事態に対処するため、「福岡県緊急雇用対策本部」のもと、全庁一丸となって雇用対策に取り組んでまいります。
 まず第一は、雇用重点分野への人材移転であります。
 人手不足が続く農業や福祉・介護分野、新たな雇用創出が見込める新生活産業、有効求人倍率が高い安全・保安の4分野への人材移転を重点的に進めてまいります。
 第二は、きめ細かな就職支援であります。中高年、若者、子育て女性それぞれに専用の相談窓口を設け、職業経験や家庭環境、勤務条件に応じた就職支援を行います。
 第三は、安定して働くことができる職業能力の向上であります。ITや介護などの職業訓練を大幅に拡充し、即戦力として活躍できる技術修得を支援します。
 新たな雇用を生み出すためには、新しい魅力的商品の開発、販売方法の工夫が重要です。よかもん市場によるインターネット通販への参入拡大、斬新なデザインの商品や包装の開発、中小企業と農林漁業者が共同で取り組む新しい特産品の開発、地域商品券による商店街振興など、本県雇用の7割を担う中小企業を重点的に支援してまいります。
 中長期的には、世界で売れる新製品、新市場を開拓し、世界市場を拡大していく必要があります。自動車、水素エネルギー、先端半導体、バイオなど本県が進めてきた先端成長産業の育成・集積により培われた技術や研究成果を大いに活用し、高齢者が颯爽と運転する新しい安全カーの開発、家庭や自動車用の燃料電池の開発により低炭素社会を構築する福岡水素戦略、超小型無線機による高速大容量情報ネットワークの構築、ペプチドワクチンによる第4のがん治療法の実現など、雇用創出プロジェクトを戦略的に進めてまいります。
 現在の厳しい雇用情勢は、急激な高齢化が進む農林水産業にとって、優秀な人材を確保する好機であります。集落営農組織や農業法人による農作業の集約化を進め、新たな人材の参入を促進する高収益産業づくりを進めます。
 また、「あまおう」に続く新品種・新ブランドの開発、高収益型園芸農業産地の育成、直売所での農産物と水産物の一体販売の促進、農産物の海外輸出の本格実施など、農林水産物の内外の消費拡大を戦略的に進めます。
 民間の設備投資が急速に冷え込む中、雇用を確保し、景気の浮揚を支えるための公共事業の役割は極めて重要であります。今後どうしても必要な、学校施設の耐震化防災工事など県単独公共事業を大幅に増やしてまいります。
 少子高齢化が進み行政ニーズが多様化する中、きめ細かなサービスを提供していくためには、県民の皆さんが協力し支え合う共助社会をつくることが必要です。
 共助社会の重要な担い手となるのは、意欲的で機動力に優れるNPOやボランティアであります。「新しい時代の公」を担うNPO・ボランティアと企業、行政との協働を積極的に進めてまいります。
 本県では、出生数が平成18年から連続して増加を続けています。「子育て応援宣言企業」や「子育て応援の店」など県民を挙げての子育て応援社会づくりが大きな成果を上げているこの機会を逃すことなく、子育てを楽しみ、子育て家庭を温かく支える社会づくりを進めてまいります。
 我が国は、経済を発展させ、医療や福祉、介護制度を整え、衛生環境を向上させ、世界に冠たる長寿国家を実現しました。年をとってもはつらつと生活を楽しみ、安心して暮らせる健康長寿社会づくりを進めてまいります。
 また、障害者の皆さんが自立し、安心して暮らすことができるよう、就労支援や施設でつくる製品の開発支援、地域での生活支援、特別支援学校の整備による教育の充実などの施策を総合的に講じてまいります。
 社会保障費が増大する中でも、安心して医療サービスを受けられる体制を確保する必要があります。周産期や小児救急などの医療体制を充実するとともに、将来にわたり持続可能となるよう社会保障費の適正化を進めます。
 また、男女が個性と能力を発揮し、活躍する男女共同参画社会づくりや、県民の社会活動への参画や職業能力向上のための生涯学習社会づくりを進めます。
 安全・安心な暮らしは、日常生活の基本であります。暴力団の壊滅、地域防犯活動の推進、食の安全対策の充実など、県民の暮らしを守る取組をさらに進めます。
 教育については、「教育力向上福岡県民会議」を中心に県内各地域で活発に議論を行い、「福岡の教育ビジョン」を策定しました。その実現を目指し、学校を中心に家庭や地域、行政の協力により進める教育力向上県民運動と、家庭や地域が中心となって進める青少年アンビシャス運動とを両輪とし、「学ぶ意欲」「志」「自律心と思いやりの心」「たくましさ」を持つ福岡の子どもたちを育ててまいります。
 快適な環境と持続可能な社会システムを将来世代に引き継いでいくことは、我々の重要な責務であります。国境を越えた環境汚染対策や温室効果ガス排出量取引の促進、レアメタルリサイクルシステムの構築、森林環境税を活用した荒廃森林の再生などの環境政策を進めてまいります。
 本県は、永年にわたる中国、韓国との交流に加え、タイのバンコク都、インドのデリー州、ベトナムのハノイ市と友好提携を締結するなど、アジア諸国と経済、文化、環境、青少年など多様な交流を進めてまいりました。今年は、福岡ベトナム総領事館も開設されます。アジア若者文化交流、留学生サポートセンターによる留学生支援をさらに充実し、アジア交流広域都市圏として、更なる発展を目指してまいります。
 大交流時代を支える福岡空港問題につきましては、国、県、市による総合的調査が終了しました。将来の福岡の発展を左右する極めて重要な課題であり、様々な意見を踏まえ、熟慮の上、年度内に対処方向を明らかにしたいと考えております。また、九州新幹線や東九州自動車道など広域交通基盤の着実な整備を推進してまいります。
 本県は、従来の一極集中・過密型ではなく、医療、文化、教育、産業などの拠点がバランスよく配置され、道路や情報インフラで結ばれたネットワーク型の新しい都市圏づくりを進めてまいりました。県内それぞれの地域特性を活かし、生活満足度を高める広域地域振興のための戦略プロジェクトを進めてまいります。
 我々地方には、実践力や大きな独創力があります。福岡県の「地域力」を大いに高め、日本の創造拠点として、高い気概を持ち県政運営に邁進してまいります。

 ここで、平成21年度の当初予算編成についてご説明申し上げます。
 地方財政は、地方税収入や地方交付税の原資となる国税収入が急激に落ち込む中で、社会保障関係経費の自然増などにより財源不足が大幅に拡大します。
 平成21年度の地方財政計画は、人件費や地方単独事業費の抑制が図られたところでありますが、一方で、特別枠として、地域の実情に応じて雇用の創出を図る「地域雇用創出推進費」の創設などにより、地方交付税を1兆円増額することとされたところであります。
 本県の平成21年度当初予算編成に当たっては、雇用創出と地域経済活性化に積極的に取り組むとともに、新しい共助社会の構築、教育力の向上など、「元気でやさしい希望のふくおか」づくりを進めていく上での緊要な政策課題に的確に対応し、財源の重点配分を行うという方針で臨んだところであります。特に、雇用創出・地域経済活性化対策については、平成20年度2月補正予算と一体となった14箇月予算として、切れ目なく重点的に実施することとしました。
 また、職員数の削減、事業の見直しなどの行財政改革に引き続き取り組むこととしました。

 この結果、平成21年度の当初予算は、
 一般会計で、1兆5,892億400万円余
 特別会計の総額で、4,054億4,900万円余
 企業会計の総額で、90億100万円余
の規模と相成っております。
 一般会計につきましてその内容を概括的に申し上げますと、予算規模は前年度当初予算比で、3.5%の増となっております。また、公債費や地方消費税精算金などを除いた一般歳出は4.2%の増となっております。
 歳出予算のうち行政施策費については、事業の見直しを進めているものの、中小企業振興資金融資費の増額等により、前年度に比べ507億円、2月補正予算との合計では、626億円の増となっております。
 社会保障費については、現下の厳しい雇用情勢を受けて、生活保護費が増加するなど、前年度に比べ66億円の増となっております。
 公債費については、過去に借り入れた県債の償還及び利子の支払が増加し、前年度に比べ38億円の増となっております。
 公共事業費については、景気を浮揚させるために重点実施することとし、県単独公共事業費は、前年度に比べ36億円、3.7%の増、2月補正予算との合計では、77億円、8.0%の増となっております。
 一方、人件費については、職員数の削減や給与構造改革などに引き続き取り組み抑制に努めた結果、前年度に比べ、33億円の減となっております。
 歳入予算につきましては、景気の悪化に伴う法人二税等の減収により、地方法人特別税の影響を除く実質的な県税等の収入が前年度に比べ596億円の減となっております。
 一方、地方交付税及び地方交付税の振替措置である臨時財政対策債等が前年度に比べ570億円増加しております。また、道路特定財源が一般財源化されたことなどに伴い、国庫支出金及び県債が前年度に比べ、121億円増加しております。
 以上申し述べましたとおり、厳しい財政状況の中で、景気雇用対策に積極的に取り組みながらも、歳入・歳出全般にわたり極力財源不足の圧縮に努めたところでありますが、平成21年度については、124億円の財源不足が生じる見込みとなりました。これに対しては、財政調整基金や減債基金等を繰り入れて収支の均衡を図ることとしたところであります。
 以上、当初予算の概要について申し述べました。今回の予算編成においては、6つの柱からなる重点施策を掲げ、福岡県の発展と県民福祉の向上のため、県政の積極的な推進を図ることとしております。
 重点施策の体系に従い、歳出予算の主な内容につきましてご説明申し上げます。

 重点施策の第一の柱は「景気・雇用・中小企業・農林水産業緊急対策の推進」であります。
 まず、雇用の確保と生活支援についてであります。
 雇用情勢が一段と厳しくなる中で、再就職が難しい中高年求職者に対し、就業相談や就職実践セミナーなどを実施するため、「中高年就職支援センター」を開設するとともに、若者しごとサポートセンターにおいては、個別就業相談や出前型セミナー、ものづくり産業人材の育成などを行ってまいります。
 また、労働行政の充実強化を図るため、労働福祉事務所を労働者支援事務所に改めるとともに、同事務所内に子育て女性就職支援センターを設置し、子育て女性の就労促進に努めてまいります。
 さらに、中小企業従業員生活資金貸付金等を確保し、求職者の生活の安定と福祉の向上を図ることとしております。
 次に、雇用重点分野への就職支援についてであります。
 人手が不足している分野や新たな雇用創出が見込まれる分野へ重点的に雇用を移転していくため、農林漁業就業セミナーや相談会の開催などにより、農業人材の確保に努めるとともに、看護職員の確保対策やホームヘルパーの養成訓練、新生活産業の創出支援などに取り組んでまいります。
 次に、安定した就職のための職業能力向上支援についてであります。
 求められる職業能力が高度化・多様化する中で、新規学卒者や離職者に対して、情報技術者の養成訓練や職業転換訓練等を実施してまいります。
 また、高等技術専門校において、即戦力訓練を実施するとともに、県立工業高校において、産業界が求める人材の育成に取り組んでまいります。
 次に、雇用を支える中小企業への経営支援についてであります。
 中小企業者の経営安定を図るため、中小企業振興資金及び元気フクオカ資金の融資枠を確保しております。特に、緊急経済対策資金につきましては、厳しい経済状況を踏まえ融資枠を拡大しております。
 また、中小企業の経営革新支援や企業間の相互の連携支援、商工会議所、商工会による経営指導などを積極的に推進してまいります。
 さらに、アーケード整備やチャレンジショップの運営など特色ある商店街づくりを計画的に進めるとともに、大規模集客施設の街なかへの誘導を引き続き進めてまいります。
 このほか、地域ベンチャーファンドへの出資を行うとともに、大学の研究成果のビジネス化を進めることとしております。
 次に、中小企業の新商品・新サービス開拓支援についてであります。
 生活支援定額給付金を契機として地域商品券を発行する商店街等に対する支援や、「福岡よかもん市場」を活用したインターネット通販による販路拡大、デザインを活用した新商品や包装の開発、地場産品のブランド化による販売促進に取り組んでまいります。
 また、アジアにおけるファッション産業の拠点化を目指し、「福岡アジアコレクション」の開催やデザイナーの発掘・育成に取り組むとともに、商談会やコンテスト入賞作品の展示即売を実施してまいります。
 次に、新たな世界市場を創出する先端成長産業の育成・集積であります。
 新たな雇用を創出し、将来に向かって本県が発展していくため、北部九州地域での自動車生産拠点の形成に向け、産学官による委員会を設立し、新しい高齢者自動車の開発を推進します。さらに人材育成、地場企業への技術支援などに引き続き取り組むとともに、「福岡モーターショー」を開催いたします。
 また、福岡システムLSI総合開発センターにおいて、回路設計から実装、試作、検証までベンチャー企業を一貫して支援するとともに、これまでの研究成果を製品に実用化するための技術開発支援などにより、企業集積を強力に推進してまいります。
 さらに、県内4大学病院に民間の4病院を新たに加え、新薬を早期に製品化できる治験ネットワーク体制を強化するとともに、がんペプチドワクチンの開発を支援するなど、バイオ産業の拠点化を進めてまいります。
 このほか、ナノテクノロジーを核とした産業の育成、ロボット産業の振興、情報産業の集積のためのプログラム言語Rubyのビジネス促進、コンテンツ産業におけるリーディング企業群の育成などを図ってまいります。
 次に、魅力ある農林水産物づくりと販路開拓についてであります。
 農林水産物の付加価値を高めるには、消費者のニーズをとらえた農林水産物づくりやブランド化による販路の拡大を図ることが重要であります。
 このため、ナシの新品種開発、飼料用米生産利用の先進モデルづくりなどに取り組むとともに、農林漁業者と中小企業者が連携した輸出向けの新商品開発を支援する県産農林水産物輸出応援ファンドを創設することとしております。
 また、新宮相島(あいのしま)での高級真珠養殖業の発展のための防疫・生産体制づくりや、高水温に強く身入りの良い県産カキの養殖技術の開発に取り組んでまいります。
 次に、農林水産業を支える力強い体制づくりについてであります。
 農林水産業の収益性を高め、持続的に発展させるため、農業につきましては、活力ある高収益型園芸農業産地を育成するとともに、担い手への農作業の集約、集落営農組織や農業法人などの組織づくりにより土地利用型農業を推進してまいります。
 林業につきましては、森林の整備や森林組合の合併促進、担い手対策に引き続き取り組むとともに、県産木材の安定供給体制の構築を進め、産業としての林業再生を図ってまいります。
 水産業につきましては、水産資源の増殖技術の開発や漁業協同組合の合併促進、生産基盤の強化等に取り組むとともに、有明海の漁場改善のため、覆砂事業やクルマエビ等の増殖実証調査を実施してまいります。
 このほか、農山漁村と都市との交流、水産物も取り入れた直売所を拠点とした地域づくりに取り組んでまいります。
 次に、景気を浮揚させる公共事業の重点実施についてであります。
 本県の雇用を支え、将来の発展に必要となる社会資本を重点的に整備することが重要であります。
 九州新幹線・鹿児島ルート、東九州自動車道、都市高速道路の福岡高速5号線などの整備促進を図るとともに、新たに創設された地域活力基盤創造交付金を活用して、これらへのアクセス強化を図る道路や地域の主要道路などの整備を重点的に進めてまいります。
 また、県立学校や総合庁舎などの耐震対策に積極的に取り組んでまいります。

 重点施策の第二の柱は「新しい共助社会の構築」であります。
 まず、NPO・ボランティアと企業、行政との協働の推進についてであります。
 県民サービスの向上のためにNPOからの優れた提案を募集・選定して協働する事業を引き続き実施するとともに、社会貢献活動に取り組もうとする企業とNPOとの協働を促進してまいります。
 また、乳幼児を持つ父親に対する子育て講座や科学少年育成フォーラムの開催など様々な分野でのNPOとの協働事業を実施してまいります。
 次に、子育て応援社会づくりについてであります。
 本県の出生数の増加の流れを確実なものにするために、「家族の日」のキャンペーンや出会い応援活動の活性化、「子育て応援の店」1万店舗、「子育て応援宣言企業」3,000社への拡大に取り組んでまいります。
 また、県内4カ所の総合周産期母子医療センターの運営費や医師に対する分娩手当を支給する医療機関への助成を行うとともに、院内助産所の施設整備等を支援することとしております。
 さらに、小児救急医療電話相談を深夜帯まで拡大するとともに、市町村が公費負担により実施する妊婦健康診査の拡充を支援することとしております。
 このほか、乳幼児医療費、ひとり親家庭等医療費に対する助成を継続するとともに、児童虐待防止のため、児童心理司による家庭訪問を実施することとしております。
 次に、安心と生きがいの持てる長寿社会づくりについてであります。
 高齢者の安心をしっかりと支える社会をつくるため、ひとり暮らしの高齢者世帯を地域全体で見守るためのネットワークの整備を引き続き進めるとともに、ねんりんスポーツ・文化祭の開催など高齢者が活躍できる場の拡大に取り組んでまいります。
 また、認知症高齢者の早期発見・早期治療、地域での相談支援体制を整備してまいります。
 次に、障害のある人が自立していきいきと暮らせる社会づくりについてであります。
 障害者自立支援法の円滑な実施のため、事業者のコスト軽減などの臨時対策事業を3年間延長するとともに、新たに介護福祉士養成施設が行う相談、研修に要する経費を助成することとしております。
 また、障害者がつくるまごころ製品の販売促進を図るとともに、設立初期経費を助成することにより、特例子会社の立地を促進することとしたほか、重度障害者の医療費に対する助成を継続することとしております。
 次に、男女が共に能力を発揮できる男女共同参画社会づくりについてであります。
 地域での男女共同参画活動を担う人材や団体を積極的に育成するとともに、配偶者からの暴力に関する相談事業や被害者の再出発応援事業などを引き続き実施してまいります。
 また、復職希望の女性医師の再就業研修を大学病院に委託し、女性医師の職場復帰を支援してまいります。
 次に、健やかな暮らしの確保についてであります。
 新型インフルエンザの発生に備え、抗インフルエンザ薬の備蓄や医療従事者用感染防護具を整備する入院医療機関への助成を行うこととしております。
 また、医療と介護の機能分担を推進するため、医療療養病床の転換に要する費用を助成するとともに、モデル病院での実態調査の実施などにより、ジェネリック医薬品の普及に努めてまいります。
 さらに、地域がん診療連携拠点病院の機能強化や、腎疾患予防のための啓発、診療連携を推進してまいります。
 次に、地域の暮らしを守る安全・安心の確保についてであります。
 安全・安心まちづくりにつきましては、条例の基本理念に基づき、地域防犯活動と暴力団の追放を引き続き推進し、県民運動の一層の展開を図ってまいります。
 治安につきましては、警察官を42名増員するとともに、指定暴力団等に対する捜査、取締りや繁華街・歓楽街等における犯罪対策を強力に実施するほか、事件被害者保護対策に努めてまいります。
 交通安全対策につきましては、「優良運転者免許更新センター」を開設するとともに、高齢者に対する交通安全訪問活動を実施するほか、交通事故防止アクションプランの実施や信号機、道路標識などの交通安全施設の整備を引き続き進めてまいります。
 このほか、高齢者・障害者世帯等への県営住宅の優先入居を実施するとともに、消費生活相談窓口の機能充実を図ることとしたほか、食品衛生の専門的・技術的監視指導を強化してまいります。
 次に、活力ある社会を担う人材を育成する生涯学習の推進についてであります。
 新県立美術館の整備手法について検討を進めるとともに、高齢者の社会参加活動を促進する交流拠点の運営及び情報提供を行うほか、生涯学習の振興方策を検討してまいります。

 重点施策の第三の柱は「教育力の向上と文化・スポーツの振興」であります。
 まず、志を持ったたくましい青少年の育成についてであります。
 青少年が自らの目標を見出し、たくましく成長することができるよう家庭、地域、学校、企業等が連携して環境を整備していくことが重要であります。
 このため、アンビシャス広場に対する支援を拡大するとともに、青少年アンビシャスの翼や日本の次世代リーダー養成塾、青少年の外国留学の支援などの事業を実施してまいります。
 また、小中学校に専門家を派遣し、児童・生徒に対する規範教育を推進してまいります。
 さらに、いじめ及び不登校問題につきましては、スクールカウンセラー等の配置やフリースクールへの助成、福岡県立大学における不登校・ひきこもりサポートセンターの運営を引き続き実施してまいります。
 青少年の非行防止につきましては、新ストップ非行県民運動として、複数の市町が広域的に取り組む街頭活動や大学生ボランティアによる補導活動を実施することとしております。
 次に、確かな学力・体力・意欲・心を育てる学校教育の推進についてであります。
 志を持って意欲的に学び、自律心と思いやりの心を持ったたくましい子どもを育てる「福岡の教育ビジョン」を県民運動として引き続き推進するとともに、新たに、下校から登校までの日常生活を小学校の1年生から6年生までの集団で行う通学合宿推進事業に取り組んでまいります。
 また、市町村による学力向上プラン推進のための取組への支援や県内の高校生の学ぶ意欲を高め、知的好奇心を喚起する体験活動などを実施してまいります。
 さらに、県が設立した3公立大学法人に対する運営費交付金や私立学校教育振興のための運営費補助金など必要な助成措置を講じております。
 このほか、福岡女子大学改革基本計画に基づく新学部開設に向けた具体的検討や、学生寮の基本・実施設計を行うこととしております。
 次に、歴史・伝統文化とスポーツの振興についてであります。
 世界文化遺産暫定リストに記載された「宗像・沖ノ島と関連遺産群」及び「九州・山口の近代化産業遺産群」が早期に世界文化遺産に登録されるよう官民一体となった取組を進めてまいります。
 また、九州歴史資料館の移転改築工事や県と市町村が共同で設置する公文書館の実施設計、県立総合プールの日本水泳連盟公認更新のための改修工事に取り組むこととしております。

 重点施策の第四の柱は「環境にやさしく持続可能な社会づくり」であります。
 まず、資源・エネルギーの確保と資源循環型社会づくりについてであります。
 レアメタル抽出技術の開発や再生炭素繊維の用途開発に向け、産学官による共同研究プロジェクトの構築に取り組むとともに、木質バイオマス供給システムの開発やバイオマス循環利用施設の整備に対する助成を行うこととしております。
 また、リサイクル総合研究センターの財政基盤を強化し、研究開発を促進することとしております。
 次に、地球的視野に立った環境の保全と水素エネルギー社会づくりについてであります。
 県内中小企業等の温室効果ガス排出量取引を促進するため、国内クレジット制度のモデル事業を実施するとともに、家庭や事業所における省エネルギーを促進し、地球温暖化対策を進めてまいります。
 また、東アジアにおける越境大気汚染に関する国際的なルールの構築に向け「国際環境協力シンポジウム」を開催するとともに、国際環境人材の育成に引き続き取り組んでまいります。
 さらに、究極のクリーンエネルギーである水素エネルギーの実用化に向け、水素製品の研究・試験を実施する水素エネルギー製品研究試験センターの運営を行うとともに、北九州水素タウンの構築、水素ハイウェイを活用した実証走行などの取組を進めてまいります。
 次に、美しい県土の保全・活用と森林の再生についてであります。
 二酸化炭素の吸収や県土の保全など多様な機能を有する森林を県民共有の財産として大切に守り育てるため、森林環境税を活用し、荒廃した森林の再生と県民参加の森林(もり)づくりを推進してまいります。
 また、矢部川流域や筑後川流域、京築地域の広域的景観計画の推進など県民参加による美しい県土保全のための取組や水資源の安定的な確保を図るためのダム建設、自然公園の整備などに取り組んでまいります。
 次に、快適な生活環境づくりについてであります。
 快適で潤いのあるまちづくりを推進し、県民一人ひとりが生活の豊かさとゆとりを実感できる環境づくりを進める必要があります。このため、都市公園や水辺環境、下水道の整備、浄化槽の設置に対する助成、市街地整備の促進などに引き続き取り組んでまいります。

 重点施策の第五の柱は「アジアと共に発展する交流拠点の形成」であります。
 まず、アジアの拠点FUKUOKAづくりについてであります。
 来訪者500万人を超えた九州国立博物館と一体となって活動する県立アジア文化交流センターの管理運営の充実や九州大学伊都キャンパスを核とした学術研究都市構想を推進してまいります。
 また、北九州空港の路線・便数の拡充や航空貨物の利用拡大を推進するとともに、三池港の機能強化を図るため、取扱貨物量の増加や定期航路の拡大に努めてまいります。
 次に、戦略的に進める多様な交流・連携についてであります。
 アジアの若者文化を通じた交流を積極的に推進するため、ウェブサイト「アジアンビート」の充実やインターネット通販事業を開始するほか、留学生サポートセンターでの留学生の就職支援を強化してまいります。
 また、福岡ベトナム総領事館の開設を記念してベトナム・フェアを開催するとともに、アマゾン及びペルーにおける日本人移住記念式典等に代表団を派遣して交流促進を図ることとしております。

 重点施策の第六の柱は「地域力の向上と発揮」であります。
 まず、生活満足度を高める広域地域振興の推進についてであります。
 県営天神中央公園をふくおか交流お祭りひろばとし、都市と農山漁村との交流や若者文化の情報発信などに大いに活用してまいります。
 また、筑後ネットワーク田園都市圏構想、京築連帯アメニティ都市圏構想を推進するとともに、福岡、北九州、筑豊地域における地域活性化プロジェクトに取り組んでまいります。
 さらに、市町村の合併に向けた取組や合併後の一体的なまちづくりを引き続き支援してまいります。
 次に、地方分権を活かす行財政システムづくりについてであります。
 出先機関の再編や職員数の更なる削減、職員の意識改革など行政改革大綱に基づく行財政改革を進めてまいります。
 また、市町村の税の徴収力を高めるための専任組織を県税事務所に設置するなど、県と市町村との連携を積極的に進めてまいります。

 本日、ここに提案いたしております議案は、ただいまご説明申し上げました平成21年度予算議案20件のほか、条例議案24件、契約の締結に関する議案2件、経費負担に関する議案2件、その他の議案7件であります。
 このうち、条例議案についてその概要をご説明申し上げます。
 第一は、「福岡県青少年健全育成条例」の一部を改正する条例であります。その内容は、深夜連れ出し等青少年の健全育成を阻害するおそれがある行為を防止するとともに、有害図書類の区分陳列等の徹底を図るため、所要の規定を整備するものであります。
 第二は、道路交通法等の一部改正により、75歳以上の運転免許の更新を受けようとする者に対する認知機能検査事務が新設されたこと等に伴い、これらの手数料の徴収について必要な事項を定めるとともに、所要の規定を整備するため「福岡県警察関係手数料条例」の一部を改正するものであります。
 第三は、「福岡県美しいまちづくり条例」の一部を改正する条例であります。その内容は、景観法の規定に基づく広域的な景観計画を策定するに当たり、当該計画区域内における景観形成に支障を及ぼす行為の規制等について必要な規定を設けるものであります。
 第四は、「福岡県保健福祉関係手数料条例」の一部を改正する条例であります。その内容は、所有者からの犬又はねこの引取りについて新たに手数料を定めるほか所要の規定を整備するものであります。
 第五は、「福岡県税条例」の一部を改正する条例であります。その内容は、個人の県民税及び市町村民税の徴収及び滞納処分に関する知事の権限に属する事務を4県税事務所長に委任するため、所要の規定を整備するものであります。
 そのほか、人事委員会の給与等に関する報告にかんがみ、本県職員の勤務時間について変更するもの、県立学校及び市町村立学校の教育内容の充実、児童生徒数の変動等に伴い、当該学校の職員の定数を改めるもの、警察法施行令の一部改正により、本県警察官の定員等を改めるもの、出先機関の再編等により所要の規定を整備するもの6件などであります。

 以上、提出議案の概要についてご説明申し上げましたが、いずれの議案も県政運営上緊要なものでありますので、慎重ご審議の上、議決下さいますようお願い申し上げます。

追加提出議案(平成21年3月4日)

 本日、追加提案いたしました議案は28件でありますが、その内訳は平成20年度補正予算関係議案14件、条例議案3件、経費負担に関する議案11件であります。

 まず、予算議案についてご説明申し上げます。
 今回の補正予算は、国の第2次補正予算関連経費について追加するほか、国庫支出金等の決定に伴う追加経費、その他県政運営上年度内に措置する必要がある経費について増額補正するものであります。また、経費の節減などにより年度内の所要額がほぼ確定した事業費等について減額補正を行っております。
 補正予算の額は、一般会計で119億7,000万円余、特別会計で33億7,000万円余をそれぞれ減額いたしております。また、企業会計では、電気事業会計ほか2会計で補正を行っております。
 その結果、平成20年度予算の総額は、一般会計で1兆5,634億5,400万円余、特別会計で6,300億1,900万円余と相成っております。
 本年度の県税収入は、現下の厳しい経済情勢を反映して、現計予算額を329億円程度下回ることが見込まれることから、これを減額し、代わるべき財源として減収補てん債などを計上することといたしております。
 次に、歳出予算で追加いたしました主な経費についてご説明申し上げます。
 国の第2次補正予算関連経費につきましては、地域活性化・生活対策臨時交付金、地方消費者行政活性化交付金及び障害者自立支援対策臨時特例交付金等を財源とする基金の造成費を計上しております。また、生活保護費などの社会保障費や直轄事業費負担金を増額しております。
 以上が補正予算の概要であります。
 条例議案は、国の交付金等を財源として、基金を設置するため条例を制定するもの及び一部改正するものであります。
 制定する条例は、地域の活性化等を推進するための「福岡県地域活性化・生活対策臨時基金条例」及び消費生活相談窓口の機能強化等を図るための「福岡県消費者行政活性化基金条例」の2件であります。
 改正する条例は、障害者自立支援法の円滑な運用や福祉・介護人材の確保を図るため、「福岡県障害者自立支援対策臨時特例基金条例」の有効期限を延長するとともに、所要の規定の整備を行うものであります。
 経費負担に関する議案は、空港整備事業ほか9件について議決内容の一部を変更するもの及び海の中道海浜公園事業について福岡市の負担すべき金額を定めるものであります。

 以上、提出議案の概要についてご説明申し上げましたが、いずれの議案も県政運営上緊要なものでありますので、慎重ご審議の上、議決下さいますようお願い申し上げます。