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人獣共通感染症への対応力の強化に関する決議

 

 今、世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るい、感染者と犠牲者が爆発的に増え続けている。
 また、20世紀初頭に大流行したスペイン風邪等の経験に照らし、今後、感染が一度収束に向かったとしても、第2波、第3波の感染拡大が危惧されており、さらに近年、MERS、SARSといった新たな感染症が次々と人類を襲うようになっている。
 これからの我々は、新型コロナウイルスや新たな感染症とともにある社会を生きていくものと覚悟し、感染症から人々の生命と健康を守り、その生活と経済への影響を最小とするための備えを充実・強化していかなければならない。
 新型コロナウイルスやMERS、SARSといった感染症は、人獣共通感染症(動物由来感染症)と呼ばれ、人の感染症の約6割を占めるが、人と動物の生活環境や自然環境の変化に伴い両者の関係がより近接したことから、抵抗力を持たない人に感染し、猛威を振るうようになったとされている。
 このため、世界医師会と世界獣医師会は、人と動物の健康と環境の保全は密接に関連し合う一体のものであり、人獣共通感染症対策には、医学と獣医学の分野を超えて取り組まなければならないとの「ワンヘルス」の理念を掲げ、力を合わせた取組が始まっている。そして、平成28年11月には、「第2回世界獣医師会―世界医師会“One Health”に関する国際会議」が本県で開催され、ワンヘルスの実践の礎となる「福岡宣言」が出されたところである。
 新型コロナウイルスによる現下の危機的状況の中、まさにこの「ワンヘルスの実践」による人獣共通感染症への対応力の強化が喫緊の課題となっている。医学と獣医学の知見を統合し、国連が推進するSDGs(持続可能な開発目標)の観点も踏まえて、人獣共通感染症に対する防疫対策の強化や予防及び治療に関する研究と診療体制の充実を推進し、これらの取組を担う人材を育成するとともに、人々がインフォデミック(真偽不明情報の氾濫)に惑わされず適切に対処できるよう、ワンヘルスに関する啓発も進めなければならない。
 さらに、過去何度も人獣共通感染症が発生し、流行してきたアジア大陸に近く、玄関口とも呼ばれる地理的位置にある本県、そして九州にとって、水際で感染症の流入を阻止するための取組は避けることのできない責務である。
 よって、福岡県議会は、ワンヘルスの観点から感染症対策を一元的に担う組織体制の強化と所要の法改正を国に求め、アジアに向けた人獣共通感染症の防疫対策、研究等の拠点となるセンター機能を九州に誘致することを九州各県及び国に働き掛けるとともに、ワンヘルス宣言発出の地である本県が先頭に立って、条例の制定を含めワンヘルスを実践する仕組みの構築に取り組むことを宣言するものである。
 以上、決議する。

  令和2年6月24日

                      福岡県議会