「福岡県ワンヘルス推進基本条例」が制定されました
令和元年末に発生した新型コロナウイルス感染症は、県民の皆様にも多大な被害をもたらし、生活や事業活動にも深刻な状況が発生しています。この新型コロナウイルス感染症は、人と動物双方に感染する「人獣共通感染症」の一つです。
これまで世界を騒がせたMERSやSARSといった感染症も人獣共通感染症であり、いまや人の感染症の約6割を占めると言われています。
こうした人獣共通感染症は、森林開発などにより、生態系の崩壊が進み、人と野生動物の生存領域が近づきすぎたことで、動物が持つ病原体が抵抗力のない人間にも感染するようになったものです。
このように人と動物の健康並びに環境の健康(良好な自然環境の保全状況)は、密接に関連し合う一体のものであることから、今、世界医師会と世界獣医師会、そして(公社)日本医師会と(公社)日本獣医師会は、連携して、「人と動物の健康、そして環境の健康を一体のものとして守る」という「ワンヘルス」の理念を提唱し、その実現に取り組んでいます。
特に本県では、平成28年11月に北九州市で開催された「第2回世界獣医師会・世界医師会“One Health”に関する国際会議」において、ワンヘルスの理念を実践する上で基盤となる「福岡宣言」がまとめられ、さらに、令和2年6月の本県議会定例会で、条例制定を含めた「人獣共通感染症への対応力の強化に関する決議」が議決されました。
これを受け、福岡県議会議員提案政策条例検討会議(座長:香原勝司議員)では、ワンヘルスの実践を進めるための条例制定に向けて、15回におよぶ会議を開催し、検討を重ねてまいりました。
同検討会議では、ワンヘルス推進の基本的な仕組みだけではなく、様々な感染症に向けた対策として、県民の皆様の生命と健康、さらに生活を守り、苦境にある事業者や医療関係者を支援する具体的な仕組みについても併せて検討し、「ワンヘルスの推進」と「感染症対策」の2本の柱からなる条例素案を取りまとめました。
しかし、素案の具体的な感染症対策に関しては、本県議会の各会派から、県民や感染者の安心と納得が得られる仕組みにするには、さらに議論を深めるべきではないかとの意見がなされ、また、パブリックコメントにおいても同様のご意見が多数寄せられました。
このため、同検討会議は、具体的な感染症対策については、さらに検討を継続することとし、既に議論がまとまり、ご賛同の声も多くいただいた「ワンヘルスの推進」に関し基本となる事項について、先行して条例化することとし、条例案を修正したうえで、令和2年12月16日に議長へ報告を行いました。
この条例案は、議員提案により同年12月18日の12月定例会閉会日にて可決・成立し、令和3年1月5日に公布されました。
今回の制定の主な内容は、次のとおりです。
・県や関係者の役割分担とともに、「人獣共通感染症対策」、「人と動物の共生社会づくり」など人と動物と環境の健康を一体的に守るための6つの課題について、取組の基本方針を定め、これを具体化するための実行計画を県が定めることとしたこと。
・県に、ワンヘルスセンターを置き、関係する部局と出先機関が横断的に連携する体制を整備することとしたこと。
・国、県及び民間の防疫や研究機能と人材育成機能等を集積させて、人獣共通感染症対策の拠点をつくることとしたこと。
「福岡県ワンヘルス推進基本条例」(PDF:307KB)
福岡県議会議員提案政策条例検討会議委員
中牟田伸二(自民党県議団)
渡辺勝将(自民党県議団)
渡辺美穂(民主県政県議団)
佐々木允(民主県政県議団)
大塚勝利(公明党)
西尾耕治(公明党)
江口善明(緑友会)
堀 大助(緑友会)