トップページ > 本会議の情報 > 平成24年2月定例会 > 平成24年2月定例会の知事議案説明要旨

平成24年2月定例会の知事議案説明要旨

当初提出議案(平成24年2月22日)

 議案の説明に入ります前に、発言をお許しいただきたいと思います。
天皇陛下におかれましては、先日よりご病気ご療養中であります。県民とともに、一日も早いご快癒を心からお祈り申し上げます。

 本日ここに、第5回定例県議会を招集いたしましたところ、議員の皆様におかれましては、ご参集いただき、厚くお礼申し上げます。
このたびの議会は、県政運営の基本となる平成24年度の当初予算をはじめ、多くの重要な案件についてご審議をお願いするものであります。

 議案の説明に先立ち、まず県政運営に関する私の所信を申し上げ、議員各位をはじめ、県民の皆様のご理解と、より一層のご協力をお願い申し上げる次第であります。

 私が知事に就任してから十か月が経過しました。
できるだけ現地に赴き、多くの方から意見を聞き、地域の課題や県政に対する期待を私なりに整理し、福岡県の発展と県民福祉の向上のために全力を尽くしてきました。
東日本大震災からまもなく1年になります。未曾有の大震災から、私たちは多くのことを学びました。
これまでの十か月の経験と震災から得た教訓をもとに、県民生活の「安定」「安全」「安心」を向上させるとともに、福岡県を元気にし、被災地の復興と我が国の発展に貢献したいと考えております。

 世界同時不況以降、厳しい経済情勢が続いていた我が国に、大震災による甚大な被害と歴史的な円高が加わり、平成23年の我が国の貿易収支は、第二次石油危機以来、31年ぶりの赤字となりました。我が国の成長と雇用を支えてきた製造業の空洞化を阻止し、新しい産業を興し、生活の基本である雇用をなんとしても確保して、県民生活の安定と安心を図っていかなければなりません。そのためには、まず何よりも、雇用の8割を担い、地域経済を支える中小企業が元気にならないといけません。金融支援や商品開発、販路拡大など総合的な振興策を充実強化してまいります。
昨年12月、県と両政令市が共同で申請した「グリーンアジア国際戦略総合特区」が国の指定を受けました。本県は、日本海側に位置し、成長著しいアジアに臨む、我が国最大の都市圏であります。アジアの玄関口として積み重ねてきた多様で親密な交流の実績、自動車、半導体、ロボットなど先端産業の集積、公害問題を克服した技術・経験といった強みを活かし、これからの成長分野である「環境」を軸として、アジアから世界に展開する産業拠点を目指す考えであります。

 農林水産業は、国民の生活や食の安全を支え、国土の保全など多面的な機能を有する大切な産業であります。生産者の高齢化が進む中、意欲のある若者が農業に参入し定着できるよう、経営力を強化し、将来にわたり発展する足腰の強い産業として育成していかなければなりません。
本県の農林水産物には、生産者や関係者の皆様が額に汗して作り上げてきた高い品質とブランド力があります。また、本県は、農林水産物の生産地であるとともに一大消費地でもあります。
品質やブランド力にさらに磨きをかけ、消費者に支持、応援される産業として発展していくことを目指してまいります。

 震災で、私たちは、家族や人とのつながり、地域とのつながりの大切さを実感しました。いわゆる「絆」を大切にし、生活者の視点をこれまで以上に重視した政策を進めていきます。住み慣れた地域で、家族や親しい仲間とともに、楽しく安心して生活できることは、この上ない幸せだと考えます。
高齢者や障害者、子育て家庭などを地域の人びとが日頃から温かく見守り、いざというときには協力して安全を確保する、そのような互いに支え合い、扶け合う社会を築いていきたいと考えています。自治会や町内会など地域コミュニティを再生し活性化すること、また、地域住民、NPOやボランティア、行政、企業など多様な立場の人びとが協力して地域の課題を解決していくことが必要です。

 少子・高齢化が急速な勢いで進んでいます。国の将来人口推計によると、30年後には、働く世代1.4人で1人の高齢者を支える時代が到来します。
本県では、若者の結婚応援や仕事と育児との両立、保育所の整備や乳幼児医療の無料化など少子化対策に重点的に取り組み、出生率も改善してきました。
高齢者が年齢にかかわりなく、それぞれの意思と能力に応じて、活躍し続けることができる、選択肢の多い社会、「70歳現役社会」づくりにも全国に先駆け取り組んでいます。
将来も我が国が活力を維持し、豊かな生活を送ることができるようにするためには、今を生きる私たちが、次の時代を担う人たちが安心して結婚や子育てができ、女性や高齢者が能力を存分に発揮し活躍できる社会を築いていかなければなりません。
また、誰もが生涯をとおして健康に暮らすことができ、必要なときに福祉や医療サービスが受けられる社会にしていく考えであります。

 このたびの震災では、自らの被災を顧みず、秩序を保ち、救護や支援活動に従事し、互いに励まし合う被災者の姿に、世界中から驚きと称賛の声が寄せられました。
この日本人の気高き精神が養われてきたのは、先人が何よりも人づくりに力を注いできたからであります。社会が大きく変わり、国際競争が厳しさを増す時代にあって、教育の果たすべき役割は、ますます重要になっております。
激動の時代をたくましく乗り越え、困難な中でも他人を思いやり、社会に貢献する子どもたちを育てていきます。

 原子力発電所の事故により、我が国のエネルギー政策は、これまでの地球温暖化に加え、電力の安定供給という課題に直面することとなりました。
エネルギー供給の多様化・分散化、利用の効率化がますます重要となっており、地域の果たすべき役割が高まってきています。このため、昨年いち早く「エネルギー政策室」を設置したところであります。今年の7月からは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度も始まります。太陽光、風力、中小水力などの地域のエネルギー資源の開発導入を促進するとともに、省エネの普及に力を入れ、エネルギーの地産地消をできる限り進めていきます。

 東日本大震災は、私たちに日々の防災対策の大切さを改めて認識させました。
同時に、被災者の支援や復旧・復興の過程で、様々な課題や対応策が明らかになりました。こうした貴重な経験を活かし、今年度内には、新たな地震・津波対策を定める地域防災計画を取りまとめます。また原子力発電所事故に備えた地域防災計画も来年度の早い時期に策定します。
新たに策定する計画に基づき、市町村や地域住民の防災体制の充実、迅速かつ的確な防災情報の提供、災害発生時に効果を発揮する実践的な訓練の実施など、地域の防災力を高め、県民生活の安全・安心を向上させる考えであります。

 治安の確保は、県民生活の基本であります。本県では、発砲事件により県民が犠牲になるなど、暴力団によるとみられる断じて許し難い事件が頻発しています。改正福岡県暴力団排除条例の一部が2月1日に施行され、政府も暴力団対策法を改正する方針です。こうした手段も駆使して、県警察、行政、事業者、県民あげて暴力団に立ち向かっていかなければなりません。
本県の飲酒運転事故は、昨年大きく減少したものの全国ワースト2位であり、「飲酒運転はしない、させない、許さない」という意識を県民一人ひとりに浸透させていく必要があります。県議会とも協力し全力を挙げて飲酒運転の撲滅に取り組んでまいります。
さらに、性犯罪や青少年非行など全国ワースト上位を断固返上し、安全で安心して暮らすことのできる社会にしていかなければなりません。

 このような考えのもと、このたびの議会に県政推進の指針となる「福岡県総合計画案」を提案しております。
計画案では、「県民幸福度日本一」の福岡県を目指し、重点的に取り組む施策の方向や目標を10の分野にわたり体系的に示しました。
また、毎年県民意識調査を実施し、その結果を踏まえて施策の充実強化につなげ、県民の皆様の幸福度や満足度が向上する好循環をつくっていく考えであります。

 同時に、施策の推進に当たっては、厳しい財政状況のもと、限られた財源や人的資源を効果的・効率的に活用することが不可欠であります。組織や人員体制、歳入・歳出など、あらゆる分野について不断の見直しを行い、行政改革を進めることとし、その基本となる「行政改革大綱案」を今議会に提案しております。

 以上、平成24年度当初予算編成に当たっては、県民一人ひとりが幸福を実感できる「県民幸福度日本一」の福岡県を目指し、県民生活の「安定」「安全」「安心」を向上させるという基本方針で臨んだところであります。

 ここで、平成24年度の当初予算について、ご説明申し上げます。

 地方財政は、地方税収入や地方交付税の原資となる国税収入が緩やかに回復することが見込まれる一方で、社会保障関係経費の自然増や公債費が高い水準で推移するなど、依然として大幅な財源不足が続いています。
平成24年度の国の一般会計当初予算は、前年度比2.2%減となっております。
県としては、こうした厳しい財政環境が続く中、歳入・歳出の改革にしっかりと取り組みつつ、限られた財源を最大限活用して、予算編成を行うこととしました。

 平成24年度の当初予算は、
一般会計で、1兆6,313億4,200万円余
特別会計の総額で、5,640億1,800万円余
企業会計の総額で、84億7,600万円余
の規模となっております。
一般会計につきまして、その内容を概括的に申し上げますと、予算規模は、前年度当初予算比で、0.7%の増となっております。また、公債費や地方消費税清算金などを除いた一般歳出は、0.3%の減となっております。
歳出予算のうち、公共事業費については、補助公共事業費が減となる中、地域経済の発展と景気の下支えを図るため、県単独公共事業費を前年度に比べ47億円、5.4%増額し、補助・単独公共事業費合わせて前年度比2.0%増を確保しました。
社会保障費については、国民健康保険助成費や後期高齢者医療給付費負担金が増加するなど、前年度に比べ198億円の増となり、また、公債費は、89億円の増となっております。
一方、人件費については、定員削減等の取組により、前年度に比べ107億円削減しました。
歳入予算につきましては、税制改正の影響や法人二税が堅調に推移することなどにより、県税等の収入が前年度に比べ199億円の増となっております。
また、地方交付税の振替措置である臨時財政対策債を含めた地方交付税等は、前年度に比べ34億円の増となりました。
一方、国の交付金により造成している基金からの繰入金は、制度改正等により前年度に比べ105億円の減となっております。
歳入・歳出全般にわたって極力財源不足の圧縮に努めたところでありますが、97億円の財源不足が生じる見込みとなりました。これについては、財政調整基金や減債基金等からの繰入れを行い、収支の均衡を図ったところであります。

 施策の体系に従い、歳出予算の主な内容につきまして、ご説明申し上げます。

 第一は、「活力にあふれ成長力に富んだ経済と雇用の創出」であります。
本県経済が今後も継続して発展していくためには、アジアの活力を取り込み、共に発展していくことが不可欠です。
県、両政令市、経済界、一体となって、「グリーンアジア国際戦略総合特区」を推進します。
規制の特例措置や税制、財政、金融上の支援策を盛り込んだ計画を策定するとともに、各種のプロジェクトを実施します。
北部九州地域での自動車産業のさらなる発展に向け、高機能部品産業の集積や地場企業の取引拡大に取り組みます。
環境に配慮した高機能ロボットの開発、先端半導体産業の海外市場開拓などを支援するほか、航空機産業の誘致にも取り組みます。
来年1月に開設予定の「有機光エレクトロニクス産学連携実用化基盤センター」を核に製品化を迅速に進め、北部九州が有機EL(電子発光)関連産業の一大研究開発拠点になることを目指します。
「環境交流促進協定」を締結している江蘇省、ハノイ市及びバンコク都において、商談会等による環境ビジネスの海外展開を進めます。
「福岡アジアビジネスセンター」において、中小企業のアジア展開を積極的に支援します。
また、特区事業への新規参入・設備投資を行う企業に対する低利融資制度や特区企業立地促進交付金を創設します。
特区関連以外では、地場の食品産業などバイオ産業の製品開発を支援し、その拠点化を進めるほか、Rubyを活用したビジネスやコンテンツ産業の集積を加速させるため、製品開発やビジネス機会の拡大を支援します。
九州新幹線全線開通の効果を活用して、筑後地域を中心とした観光キャンペーンを実施するほか、クルーズ船の本県への寄港定着や乗船客の県内各地への観光拡大に取り組みます。

 次に、きめ細かで総合的な中小企業の振興であります。
円高の影響などにより売上げが減少する県内中小企業の経営安定のため、緊急経済対策資金など中小企業振興資金の融資枠を拡大します。
中小企業が取り組む高付加価値商品の開発や販路開拓、県内の全商工会議所・商工会が共同で実施する新たな商談会を支援するほか、農商工連携の取組を強化します。
また、商店街が行うプレミアム付き地域商品券、出張販売、宅配などの取組を積極的に支援します。
販路拡大に取り組む伝統工芸の若手生産者に対する新たな助成を行うとともに、伝統工芸品の展示PRを充実強化します。
新生活産業分野では、新たに、大規模展示会への出展やフランチャイズ化による多店舗展開を支援します。

 次に、農林水産業のさらなる振興であります。
ブランド化を促進し、競争力を高め、足腰の強い農林水産業をつくります。
これまでも、「あまおう」、「博多万能ねぎ」など全国に誇れる福岡のブランドを確立してきました。
来年度は、「とよみつひめ」、「ラー麦」、「博多和牛」について、集中的に、高い品質やおいしさを県内外に発信し、ブランド力の向上に取り組みます。
高収益型の園芸農業を育成するため、生産施設等の整備に対する助成を拡大するとともに、生産から新商品開発、販路拡大まで一体的に取り組む六次産業化を強力に推進します。県産農林水産物の輸出拡大にも積極的に取り組みます。
水田農業については、経営規模拡大や複合化による経営力の強化、米の消費拡大に取り組みます。
若者をはじめ、農外からの新規参入を促進するため、就農前後の所得確保のための給付金を支給します。女性農業者については、家事や介護などの負担軽減を図るとともに、経営参画に必要な能力開発や起業化に向けた取組を支援します。
県産農産物に対する県民の力強い支持を拡大するため、「ふくおかの農業応援団づくり」の取組を強化します。
鳥獣による農林産物被害の増大に対処するため、侵入防止柵や箱わなの設置、獣肉加工処理施設の整備に対する助成を大幅に拡充します。また、新たに、地域ぐるみの捕獲対策や処理体制の整備を支援します。
林業については、コスト削減、生産増加により、競争力のある県産材の供給体制を確立することとし、民間事業体が行う高性能林業機械の整備に対して新たに助成を行います。
水産業については、直売所における直接販売の支援や有明海の漁場改善のための覆砂事業を実施し、新たに、豊前海のアサリ資源の回復に取り組みます。

 次に、雇用対策であります。
本県の有効求人倍率は緩やかに改善しているものの、新規学卒者の就職内定率は、依然厳しい状況が続いています。求職者の状況に応じた、きめ細かな就職支援にしっかり取り組みます。
「若者しごとサポートセンター」では、相談体制を強化し、特に新卒者の就職支援を強化します。また、「30代チャレンジ応援センター」、「中高年就職支援センター」、「子育て女性就職支援センター」それぞれにおいて、トライアル雇用制度の活用促進、ハローワークとの連携強化、職場見学会の実施などに取り組みます。
職業能力の向上については、高等技術専門校や県立工業高校において、産業界が求める即戦力となる人材の育成に取り組みます。

 次に、魅力ある地域づくりの推進であります。
福岡県は、それぞれの地域が大きな魅力と特性を持っています。各地の地域資源を活用し、相互に補完させ、交流人口の拡大や地域の活力向上に取り組みます。
「筑後ネットワーク田園都市圏構想」や「京築連帯アメニティ都市圏構想」を進めるとともに、遠賀・中間、福岡近郊、筑豊地域における広域連携プロジェクトを推進します。
地域住民の移動手段を確保するため、市町村と連携して、コミュニティバスの運行や路線バスの維持確保を図ります。

 次に、社会資本の整備であります。
アジアの拠点空港を目指す福岡空港の滑走路増設を推進します。
北九州空港については、LCC(格安航空会社)など旅客便の誘致に取り組むとともに、24時間運用という特色を最大限に活用した貨物の拠点化を推進します。
また、東九州自動車道の整備を促進するとともに、苅田港新松山地区の工業用地造成を再開します。
苅田港、三池港の整備や貨物取扱量の拡大にも取り組みます。

 第二は、「災害や犯罪、事故がなく、安全で安心して暮らせること」であります。
まず、大震災を踏まえた防災力の強化です。
新たに、津波対策として、市町村が取り組む津波ハザードマップの作成や地域避難計画の策定を支援するとともに、道路標識や電柱に海抜表示を行います。
道の駅を防災拠点施設と位置づけ、防災倉庫や非常用発電設備を新たに整備します。県立学校をはじめとした県有施設や病院、社会福祉施設の耐震化も進めます。
いざというとき、高齢者や障害者が安全に避難できるよう、自治会や町内会など地域全体で支え合い、扶け合うことができる体制を構築する必要があります。そのため、県内全市町村が「災害時要援護者避難支援計画」を早期に策定できるよう支援します。併せて、自主防災組織の育成を進めるとともに、防災士など地域防災の担い手の養成にも取り組みます。

 次に、玄海原子力発電所事故に備えた対策についてであります。
原発から概ね30キロメートルがUPZ(緊急時防護措置準備区域)として設定され、糸島市の一部がその区域に入ることから、迅速に放射能の影響を予測するネットワークシステム(SPEEDI)の端末を整備します。
モニタリングポストによる放射線量の常時監視を行い、放射線情報を県民の皆様に提供します。
また、原子力災害に備えた広域避難計画を作成するとともに、糸島市や周辺市町と連携して、住民参加の防災訓練を実施します。

 暴力団対策は、待ったなしであります。
県警察の組織体制を強化し、排除運動に取り組む県民や企業をしっかり保護します。
「暴力団追放!地域決起会議」を開催するなど県民と一体となった活動を推進するとともに、新たに、暴力団事務所の周辺に防犯カメラを設置する市町村を支援します。また、「暴力団員立入禁止」の標章を掲げる店舗を増やすなど、資金源の遮断に向けた取組を強化します。

 飲酒運転事故は、被害者やその家族だけでなく、加害者本人と周りの多くの人々に悲しみ、苦しみをもたらします。本日、議員提案される「飲酒運転撲滅運動の推進に関する条例」と連動・連携して、条例の周知広報、違反者への受診指導、「飲酒運転撲滅宣言の店」の普及など、取組を強力に進めます。
また、高性能アルコール測定器の整備により、徹底した取締りを行うほか、映画館や街頭ビジョンを使いねばり強く根絶を訴えてまいります。

 性犯罪やひったくりをなくし、安心して暮らせる社会をつくります。犯罪が多発する地域に捜査支援カメラを設置し、早期検挙につなげます。
消費生活相談や多重債務者の生活再生支援を充実するとともに、放射性物質が含まれる食品の流通調査や生食用食肉の取扱事業者に対する監視指導、口蹄疫などの家畜伝染病の発生予防など、食の安全・安心対策に取り組みます。

 第三は、「高齢者や障害者が安心してはつらつと生活できること」であります。
「70歳現役応援センター」を開設し、高齢者の就業や社会参加を支援します。
豊かな経験や知識を有する高齢者が、保育所の送迎や託児、相談・助言など子育てを支援し、子育ての現場で活躍できるよう、「ふくおか子育てマイスター」制度を創設します。
高齢者が住み慣れた地域で、安心して暮らしていける社会をつくることも大切です。
ひとり暮らし高齢者の見守り活動など、地域の実情に応じた支え合い体制づくりを支援します。また、利用者のニーズに柔軟に対応している宅老所について、新たに防災設備の整備、バリアフリー化を支援します。
高齢者福祉施設の整備を進めるとともに、新たに介護職員の技術を審査・表彰する競技会を開催するなど、良質な介護サービスの確保にも取り組みます。
障害者が安心して自立した地域生活を送れるよう支援を強化します。障害者がつくる「まごころ製品」の売上げ拡大を目指し、県内の大型ショッピングセンター等に巡回型アンテナショップを開設します。
また、身近な地域で就業や生活面を一体的に支援する「障害者就業・生活支援センター」に臨床心理士をモデル的に配置し、就業支援を強化します。発達障害の子どもを持つ家庭を支援するため、新たに保護者に対する講座や交流会を開催します。

 第四は、「女性がいきいきと働き活躍できること」であります。
女性が多様な分野で能力を発揮し、活躍する社会をつくります。地域や企業において責任ある立場で活躍する人材を育成するとともに、目標となる女性の先駆者を発掘・紹介し、後に続く女性を増やします。
医療関係者向けに「DV被害者対応マニュアル」を策定し、被害者を早期に発見することにより、重大な被害を防止する体制を強化します。
多発する卑劣な性犯罪に対しては、防犯カメラの画像を迅速に解析する機材を整備するなど早期検挙を図ります。

 第五は、「安心して子育てができること」であります。
出会い・結婚応援を引き続き推進し、「子育て応援の店」や「子育て応援宣言企業」の取組を進め、社会全体で子育てを応援します。
近年、女性の就労希望が増加し、福岡都市圏を中心に保育所の入所申し込みが増加しています。保育所の整備を積極的に進め、平成24年度中の待機児童の解消を目指します。
「周産期母子医療センター」の運営や乳幼児医療費、ひとり親家庭等医療費のほか、妊婦健康診査に対する助成を行います。
子どもに対する手当については、国と地方の協議における合意に基づき県負担額を計上しております。
児童虐待を防止するため、職員研修を充実し、児童相談所の対応力を強化します。
様々な理由により家庭で適正な養育を受けることができない子どもたちが、健やかに育つよう、里親家庭での養育を一層推進します。児童養護施設等を退所した子どもが自立した生活を営むことができるよう、相談対応や居場所づくりなど、きめ細かな支援も行います。

 第六は、「子ども・若者が夢を抱き、将来に向かってはばたけること」であります。
児童生徒の学力を向上させるため、全国学力・学習状況調査を悉皆方式により実施します。また、小中学生を対象に英語体験活動を実施し、英語によるコミュニケーション能力の向上を目指します。
「教育力向上福岡県民運動」を充実・発展させ、家庭や地域の協力を得ながら、学校の教育力を高める取組を行います。通学合宿を充実させるとともに、新たに、それぞれの学校の創意工夫を活かした体験活動を進めます。
「青少年アンビシャス運動」をさらに推進します。アンビシャス広場や参加団体の交流・連携を進めるため、地域主導の新たな「アンビシャス体験フェスティバル」の開催を支援します。
また、読書のおもしろさを友達に伝える小学生読書リーダーを養成し、子どもの読書活動を充実します。
青少年の非行防止のため、新たに自立支援と再犯防止に力点を置いた「非行防止・絆プロジェクト」を展開します。市町村が地域団体とともに行う自立支援活動に対して助成するほか、NPOと協働した就労体験事業を実施します。
教員の使命感や社会性、専門的な知識や技能の向上を図り、教育力をさらに高め、信頼される学校づくりを進めます。
県が設立した三公立大学法人については、優れた人材を育成し輩出するため、それぞれの大学が個性を活かした特色ある教育が行えるよう、運営費交付金を交付します。
また、私立学校の健全経営を確保し、保護者の経済的負担の軽減を図るため、私立学校に対する必要な助成を行います。

 第七は、「誰もが元気で健康に暮らせること」であります。
県民の平均寿命が延びる中で、一人ひとりが長生きして良かったと実感できる社会を目指します。
個人の健康状態や生活習慣・体力に合った健康づくりを支援するポータルサイトを新設します。また、がん検診の受診率の向上のため、企業と連携した新たな啓発活動を始めます。
がんに苦しむ方々の治療方法の選択肢を拡げ、本県の高度医療技術の向上のため、来年春、九州新幹線新鳥栖駅前に開設される「九州国際重粒子線がん治療センター」のがん治療設備に対する助成を行います。
地域医療を充実するため、救急医療、小児医療、へき地医療などの体制強化を進めます。
在宅で人工呼吸器を使用する重症難病患者を介護する家族が、少しでも休息できるよう、患者の一時的入院が可能な病院を確保します。
24時間・365日対応できる自殺予防相談窓口の運営など、自殺対策にもしっかりと取り組みます。

 第八は、「心のぬくもりと絆を実感できる社会であること」であります。
大震災は、「絆」の大切さを教えてくれました。地域でのつながりが薄れ、地域コミュニティの機能が大きく低下しています。市町村が取り組む地域コミュニティの再生・活性化を支援します。
NPO・ボランティアと企業、行政との協働を進めるため、NPOによる提案事業を実施します。また、自立的で安定的な経営を行うNPOを育成するため、専門的な知識・技術を持つボランティアの派遣や協働をコーディネートする人材の育成などを行います。

 第九は、「環境と調和し、快適に暮らせること」であります。
地域の特性を活かした再生可能エネルギーの開発導入を促進するため、県内の適地情報を提供する支援システムを稼動させます。また、市町村が行う再生可能エネルギーの導入可能性調査や市町村・民間事業者が行う発電設備の整備に対する助成を行い、地産地消モデルを構築します。
県立学校八校に新たに太陽光発電設備を設置するなど、県有施設への率先導入を進めるとともに、県管理ダムを活用した中小水力発電の事業化可能性調査を実施します。
逼迫する電力需給に対応し、県民、事業者、行政が一体となって節電に取り組む「ふくおか省エネ・節電県民運動」を夏季、冬季にわたって実施します。
県営公園内の園路照明や交通信号機に加え、新たに道路照明のLED化に取り組むこととし、県下に約5千500基ある水銀灯を3年間で全て取り替えます。
持続可能な社会経済の発展のためには、資源循環型の社会システムへの転換を進める必要があります。
「リサイクル総合研究センター」において、レアメタルや炭素繊維をはじめ、新たなリサイクルシステムの研究・開発を推進します。
また、荒廃した森林の再生や生物の多様性を保全する取組を総合的・計画的に進め、豊かな自然環境を守ります。
河川や海などの水質を改善するため、下水道や浄化槽など汚水処理施設の整備を進めるとともに、治水対策と併せて、水資源を安定的に確保するため、五ヶ山ダムや伊良原ダムの建設を着実に進めます。筑後広域公園など都市公園の整備も進め、快適な生活環境をつくります。

 第十は、「豊かな文化を楽しみ、幅広い分野の国際交流を実感できること」であります。
「九州国立博物館」における日本とアジアの文化交流を促進するとともに、「県民文化祭」や「スポーツフェスタ・ふくおか」を開催します。また、「宗像・沖ノ島と関連遺産群」と「九州・山口の近代化産業遺産群」の世界遺産登録を目指します。
江蘇省との友好提携20周年記念事業やデリー州との友好提携5周年記念事業を成功させ、海外福岡県人会との交流活動も充実します。
多言語ウェブサイト「アジアンビート」を核に、若者文化の拠点化を進めます。
「アジア経済研究所」や「ERIA(東アジア・ASEAN経済研究センター)」との連携による共同研究や国際フォーラムの開催を通じて、アジア研究の機能を強化し、国内外の研究者等が集まるアジアの知的交流拠点となることを目指します。

 以上、県民生活の「安定」「安全」「安心」の向上を図る10の分野の施策について説明しました。これらと併せて、行政運営の基盤となる地方分権や行政改革なども推進してまいります。
九州各県と連携し、「九州広域行政機構(仮称)」の設立、国の出先機関の地方移譲に取り組みます。
また、新たな行政改革大綱に基づき、職員数の削減や組織の見直し、公社等外郭団体の見直し、歳入・歳出の改革などに積極的に取り組みます。
県議会の活動を広く県民に伝えるため、議会独自の広報紙を発行する経費を新たに計上します。

 本日、ここに提案しております議案は、ただいまご説明申し上げました平成24年度予算議案20件のほか、条例議案31件、専決処分したものについて報告し承認を求める議案1件、契約の締結に関する議案3件、経費負担に関する議案3件、人事に関する議案1件、その他の議案10件であります。
このうち、条例議案についてその概要をご説明申し上げます。

 第一は、「福岡県青少年健全育成条例」の一部を改正する条例であります。その内容は、青少年がインターネット上の有害な情報に触れることにより、事件等に巻き込まれる危険性が増加していることに鑑み、青少年をこれらの危険から守るため、携帯電話等の契約時において、保護者に対してフィルタリングサービスを利用しない場合の理由書の提出義務を課すこと、また、携帯電話事業者等に対して契約者へのインターネットの危険性等の説明及び説明書の交付義務を課すほか、所要の規定を整備するものであります。

 第二は、「福岡県食品衛生法施行条例」の一部を改正する条例であります。その内容は、国が定めた生食用食肉の規格基準の実効性を確保するため、専用の洗浄設備や加熱殺菌設備を設けるなど営業施設の基準を見直すほか、所要の規定を整備するものであります。

 第三は、「福岡県税条例」の一部を改正する条例であります。その内容は、「東日本大震災からの復興に関し地方公共団体が実施する防災のための施策に必要な財源の確保に係る地方税の臨時特例に関する法律」等の制定に伴い、個人県民税における均等割の税率を引き上げるほか、所要の規定を整備するものであります。

 第四は、「福岡県立公文書館条例」の制定であります。歴史資料として重要な公文書を適切に保存し、一般の利用に供するため、福岡県立公文書館を公の施設として設置するものであります。

 第五は、昨年の二次にわたる「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」の制定により、条例制定権の拡大や都道府県から市町村への権限移譲が行われたことに伴う条例の制定等であります。「福岡県知事の指定する鳥獣保護区等を表示する標識の寸法を定める条例」及び「福岡県高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に係る信号機等に関する基準を定める条例」を制定するとともに、「福岡県事務処理の特例に関する条例」ほか7条例の一部を改正するものであります。    

以上、提出議案の概要についてご説明申し上げましたが、いずれの議案も県政運営上緊要なものでありますので、慎重ご審議の上、議決下さいますようお願い申し上げます。

 

追加提出議案(平成24年3月1日)

 本日、追加提案いたしました議案は、29件であります。その内訳は、平成23年度補正予算関係議案11件、条例議案6件、経費負担に関する議案11件、その他の議案1件であります。

 まず、予算議案について、ご説明申し上げます。
 今回の補正予算は、国の補正予算関連経費を追加するほか、国庫支出金等の決定に伴う追加経費、その他県政運営上年度内に措置する必要がある経費について増額補正するものであります。また、経費の節減などにより年度内の所要額がほぼ確定した事業費等について減額補正を行っております。
 補正予算の額は、一般会計で4億200万円余、特別会計で19億8,200万円余をそれぞれ減額しております。また、企業会計では、工業用地造成事業会計において増額を行っています。
 その結果、平成23年度予算の総額は、一般会計で1兆6,350億7千300万円余、特別会計で4千38億3,100万円余となっております。
 一般会計の歳入につきましては、県税、地方交付税のほか、歳出予算に対応した国庫支出金等の補正を行っています。
 県税収入は、当初予算額を32億円程度下回る見込みでありますが、地方交付税が31億円余り増額となるほか、経費の節減などにより、一般財源の確保が見込まれます。このため、減債基金からの繰入金を30億2,000万円減額しております。

 次に、歳出予算で追加いたしました主な経費についてご説明申し上げます。
 原子力発電所から概ね30キロメートルに設定されるUPZ(緊急時防護措置準備区域)内の放射線測定体制を強化するため、糸島市内にモニタリングポスト2基を増設し、併せて放射線量を常時監視するための通信システムを整備する経費を計上しております。
 また、農産物の集出荷共同利用施設等の整備に対する助成費を措置するほか、国の交付金を財源とする「子育て応援基金」、「子宮頸がん予防ワクチン等接種緊急促進基金」、「高校生修学支援基金」などへの積立金を計上しております。
 そのほか、後期高齢者医療給付費負担金などの社会保障費を増額しております。
 以上が補正予算の概要であります。

 条例議案は、「福岡県高校生修学支援基金条例」ほか五件について条例の有効期限を延長するものであります。
 経費負担に関する議案は、海の中道海浜公園事業ほか2件について市町の負担すべき金額を定めるもの及び空港整備事業ほか7件について議決内容の一部を変更するものであります。
 その他の議案は、売却した県有地に係る損害賠償請求事件の和解について、県議会の議決を求めるものであります。

 以上、提出議案の概要についてご説明申し上げましたが、いずれの議案も県政運営上緊要なものでありますので、慎重ご審議の上、議決下さいますようお願い申し上げます。